例会会場は、先月に続いてセンチュリーがリニューアル工事中の為、京都タワーホテル9階で開催されました。

大谷会長開会の挨拶

開会の挨拶を する大谷義博会長

「春彼岸の例会に遠近よりご参加頂きまして本当にありがとうございます。今月はいろいろな事で個人的にも思いがありまして、明日は(私の住まいが東京(浅草)にあるのですが)昭和20年3月10日の東京大空襲により、東京の街が壊滅した日でありますし…。」

いつもの、人を話に引き込む言葉から、会長の挨拶が始まった。

空襲により、お寺が被害を受けた話しの流れで、大正12年9月1日にM9の関東大震災でも大きな被害を受けた事、また、その震災の3カ月前の6月1日には、前住職が急逝され、当時の境内地2500坪を全部売り払っても、その3倍以上の負債が残った事、など深刻な話が続き、会場がシーンとなった後に…、

「実は、震災のお陰で、借金を取り立てる方も、全員お亡くなりになりまして」と、会場の笑いを誘う。

その後も、ユーモアあふれた話しが続き、結びに、「私達は大空襲とか大震災など大きな被害を受け、何がどのようになるか未透視のたたない中でも、今も生かされ、ご縁を頂いているという事を痛感しています」

「そして本日は、水野先生、宗教法人がなさねばならぬ、お仕事をずっとなされ、大変にご活躍されている、先生のご講演を伺えるという大変にありがたい、ご縁をいただけました」

「今日一日また、無事に、有意義に、盛大に過ごさせていただければ、誠にありがたいことです。皆様、ようこそご参加頂きました。ありがとうございました」

頭を下げて、感謝の言葉で、開会の挨拶が終わる。


社会的擁護の現状報告

ゲストスピーカ:水野正美氏

水野正美 平安養育院長

児童擁護施設の社会福祉法人「平安養育院」の施設長 水野正美先生のお話です。

初めに、先生が今の養護施設の仕事に就いたのは6年目であること。
以前は知恩院の同じ境内地の学校で、仏教や日本史の教員として務めていたことが語られる。

そして、知恩院の山門へ続く路に立つ“ムクロジの実”の話が始まる。

6年前に平安養育園に務めてしばらくしてから、春に、養護施設を巣立つ子供へのプレゼントに、このムクロジの黒い固い木の実を3個、数珠屋さんで加工してもらいストラップを作り、渡すようになりました。

お小遣いや自立を支援するお祝いもありますが、もっと何か心のこもった贈物はないかなと、ずうっと考えていました…。

“ムクロジの実”は秋にでき、ちょうどいま頃、ポトポトと路に落ちてきます。
いつものように朝、施設の周りを掃除していた時に、これを使おうとふっと思いついたのが始まりです。

施設には2歳から入園し、長い子だと18歳まで施設にいて、大きくなる子がいます。

最近は制度もゆるやかになり、今は20歳まで、大学に行っている子供なら22歳まで、施設にいられるようになりました。

でも施設職員の在職年数は、やっと少し伸びて7年くらいです。
男女だいたい1対2位で、女性の方が多い職場です。

昔から多くの女性に福祉の分野は支えられています。
でも、結婚や出産などで退職されるケースは、まだまだ多くあります。

このように、子供はずっと長くいますが、せっかく愛着を持って頂いた職員さんは、平均すると7年くらいで、職場をやめられていかなくてはならない。

つらいな、悲しいな。そんな思いがありました。

でもこの施設の前にあるムクロジの木は、大人たちが長くそばにいられなくても、毎日、子供たちが成長していく姿を見守ってくれています。
子供たちの泣いた顔も、笑った顔も、怪我したことも、怒られている事も全て、見てくれているんです。

そんなムクロジに木への思いや、話をしながら、毎年、巣立つ子どもたちに、“ムクロジの実”が3つ並んだストラップを贈る事がやっと、できるようになってきました。

今日はそんな、児童養護施設の様子をお話させていただこうと、考えています。

水野先生の情感にあふれた、お話からはじまり、配布された資料の説明がされて、本題へと続く。

 

1.児童施設の社会的な位置づけ

児童施設は一つの社会的擁護の施設です。
社会的擁護とは、保護者のない児童や、虐待を受けていたり、保護者に監護させるのが適当でない児童などを税金により、公的責任で社会的に養育し保護すると共に、養育に困難な家庭への支援を行うことですが、児童施設はその為の施設です。

子供たちにとって、最善の環境となるようにと設けられている施設です。

昔は孤児院、その後は養護施設という名前に変わりました。でも、障害をもつ子供たちの施設でもありません。障害を持つ子も3割程はいますが、それより虐待を受けて入所される子が7割を占めています。

 

2.子供の虐待について

資料1

資料2

お手元の資料(資料1)「虐待を受けた児童の増加」を見ますと、平成2年では全国で1,101件だった児童虐待の件数が、平成28年では12万2500件(約10.5倍)となっています。

1週間前ですか、虐待を受けてお子さんが亡くなったというニュースがありましたが、残念ながら今の日本では、一日一人の子供が虐待で亡くなっていると云う事を聞きます。

さて、虐待の種類ですが(資料2)、4つの種類があげられています。
まず、怪我をさせるなどの「身体的虐待」、育児放棄やいいかげんな育て方をする「ネグレット」、子供を性的な対象とする「性的虐待」、子供を追い込んでいく、心に傷を負わせる「心理的虐待」、があります。

平成28年度で一番多いのが「心理的虐待」で全体の半分(51.5%)を占めていて、2番目が「身体的虐待」(27.2%)になっています。

 

3.拡大する「心理的虐待」被害者

ところで、調査が始められた平成18年度の数字を見ると、「心理的虐待」は(17.2%)で、「身体的虐待」が(41.2%)になっています。
約10年間で「心理的虐待」が急速に割合を増やしましたが、これは「身体的虐待」が減ったのではなく、社会の虐待に対する受け止め方のが変わり、「心理的虐待」の範囲が広がっていることを示しています。

つまり保護者や大人が何をしたら虐待になるのか、という概念規定が変わってきたのです。

最近の例では、夫婦や恋人どうしのDVが増えていて、子供も巻き込まれてきています。

「心理的虐待」には、「面前DV」と省略していいますが、子供の目の前で暴力が行われる、これも「心理的虐待」とされる。そういう拡大した解釈がされています。

また、兄弟で兄には虐待があるが弟にはない場合も、今までは直接、身体的虐待を受けた兄だけを虐待のケースに数えていましたが、今はそれを目撃した弟も、心に衝撃をうけた「心理的虐待」の被害者であると捉えるようになっています。

そういう虐待認定の範囲が広がった結果として、「心理的虐待」が増えています。

また、今までは警察の範囲で収まっていたことが、子供の事で何かあった場合には、管轄の児童相談所に通告するようになった。と云う事も件数が増えた理由にあげられます。

とは云え、やはり子育てや家族の在り方の大きな変化、社会が便利になってきた事と引き換えに何かが失われてきた。そんな思いもします。

 

4.京都市における虐待被害について

資料3

資料4

資料5

今までの虐待についての話は、全国的なものですが、京都市はどうでしょうか。(資料3、資料4)平成29年8月に、京都市の児童相談所が出した資料によると、虐待に関する相談件数は平成24年から平成28年度の5年間で(1,157件から1,543件)と、徐々に増えています。

どこから相談を受けたかという相談経路では、一番多いのは警察等(429件)、続いて近隣知人の通報(282件)となっています。

行政区別では伏見(235件)、右京(191件)、山科(175件)が多い地域ですが、それに対して東、山区(31件)は少なく見えます。でも、子供の人口で割ると決して少なくありません。
地域に限らず虐待件数は増えています。

ところで、資料の4番目の児童虐待の対応状況の(2)を見ますと、やはり京都市でも、心理的虐待(515件)が、身体的虐待(397件)を上回っています。

また資料の5番目の主たる虐待者では、全体(1,145件)のうち実母(546件)、実父(541件)の順番となっております。

 

5.虐待被害者への対応について

次にその下に書かれている、認定後の対応別件数を見ますと、認定件数1,145件(相談・通告件数は1,543件)のうち、施設入所は17件(全体の1.5%ほど)で、在宅支援や見守り(1,126件)が,9割7分以上を占めています。

地域では虐待認定後の子供は、地域で保護すべき子供たちとなり、保険センター、民生児童委員、児童相談所、京都市の担当委員とかが中心になって、どのように、対象となった子供を管理しながら支援していくのか進められるのですが、それでも、先日のニュースのように、子供が亡くなるという状況があります。

資料6

通告受けた児童相談所はどんな対応をするのか、についてですが、京都市では、このような対応マニュアルがあります。(資料6)

ところで、一年を通して、虐待の近隣知人からの通告が多いかと言えば、夏前、夏休み明け、特に5月頃が多くなります。
暖かくなって窓を開ける時間が多くなると、子どもの泣き声が気になるからです。

対応マニュアルでは、通告があった場合は「原則48時間以内に安否確認をする」事になっていますが、これプラス、二年前から警察と同じように児童相談所の係官は現場に踏み込むことができるようになりました。

でも、年間1500件の通報があり、その一つひとつに、2日以内で、その子の安否の確認をする。さらに、今後どういう支援をしていくかと考えて行く。
本当に大変なお仕事だと思います。児童相談所、児童福祉の方々には頭が下る思いです。

 

6.里親制度について

資料7

資料8

その後、水野先生は、子どもたちを受入れる各種の施設についてご説明され、(資料7)平安養育院は児童養護施設であり、自立援助ホームでもある事、また、国の考えとしては、今後は里親やファミリホームの数を増やして行く事が話されました。

しかし国の財政を考えると、高齢の社会福祉の軽減化の問題もあり、難しいのでは無いかとの見解が述べられました。

里親の都道府県別委託率では(資料8)、新潟、静岡、福岡が多く、京都市は後ろから4番目。
これを国は今後、数年間で、75%まで持って行こうとのことです。

 

この後、水野先生はご自分の過去について話されます。

33歳の時に奥様に先立たれ、お子様(2歳、4歳、7歳)を3人育ててきた事。
今から思えば、当時の自分がいかに余裕が無く、自分は一生懸命やっているんだという思いが強く出て、外に攻撃だったこと。虐待の区分けでいう、ネグレクト的な部分もあったのではないかと、反省したことなどが語られました。

それでも今は、子供が育ち、皆が自立して、再婚された後も上手く家族の絆(再統合)がつくれた事に感謝している。ということが述べられました。

また自分の経験から、虐待をした親たちにも心のケアが大切と考えているそうです。

最後に、平安養育院が7年後あたりを目標に、小規模な養育方法(子供8人~10人に対して職員4人位)がとれる環境、施設に大改修をしていくという事が述べられました。

そして国も来年度から、子供たちが施設を出た後の、自立支援の施策を拡大していくという、明るい話をされて、話が終了しました。


原田会員の乾杯の発声

会に入って10年以上がたち、同期に中川会員、北村弘彦会員、と3人でいろいろとこの会で研鑽させて頂きました。
とお話され、川西インターの近くに建つご寺坊(東光寺)には、円空の木喰の仏像が、15体安置されていること等が、ご紹介されました。
そして、「仏教クラブ会員様のご健康と、仏教クラブの発展を祈念しまして、乾杯!」と、声高々に乾杯されました。


本日ご出席中で、今期一年間ずっと休まずご出席された皆勤賞の方々は次の5名の会員です。

・北村弘彦 会員
・沢田教英 会員
・正垣肇 会員
・白坂ひろ子 会員
・山田直永 会員

水野氏のお話を真剣に聞く会員諸氏

水野氏のお話を真剣に聞く会員諸氏

水野氏のお話を真剣に聞く会員諸氏

水野氏のお話をレポートする山田会員

水野氏のお話を興味深く聞く会員

講演中の水野氏

「社会的養護の現状」レジュメ

水野氏のお話を真剣に聞く会員諸氏

例会の前に開催された運営委員会の様子

レポート・文:山田俊行

会場写真:山田俊、正垣

編集:藤野正観