畳に生きる

中村勇三
なかむらゆうぞう

昭和4年生まれ。同志社大学商学部卒業後、畳技術を学び、神社仏閣の畳仕様を習得。昭和58年、5代目当主となる。平成8年、(財)京都府文化財保護基金より「功労賞」授賞。    京を語る


畳は生きている


京都・畳三 中村三次郎商店 中村勇三


 「立って半帖、寝て一帖」と言われるように、畳は古来より座具、寝具として使用され、今日、寺院では、円座・拝敷・礼盤・茵・厚畳として残っております。
 平安時代の貴族社会では、そこに座る人により、より厚く、広く、高く重ね、その緑の紋や色を変えて地位や身分を区別していたようです。
鎌倉から室町時代には書院造りが完成し、部屋には畳が敷き詰められるようになり、茶道の発展とともに切り離せないものとなりました。一般住宅に敷き詰められるようになったのは明治以降で今日に至っております。

興正寺御影堂内陣 四方繧繝彩縁 三帖台制作中
 畳は床、表、縁の各々が植物からでできており、畳床は1年以上乾燥させたヒネ藁を使い縦横交互に約40cm積み重ね、それを5cm位に圧縮して縫い上げます。
畳表は11月から蘭草の苗を水田に植え、7月中旬に刈り取り染土で泥染後乾燥し、織機で綿糸または麻糸で茣座に編み上げます。
畳縁は綿・麻または絹で仕上がった布製品を用います。

 畳は圧縮された藁により弾力性、保温性、吸汗性、吸音性、難燃性に富み、畳の上での睡眠は保健上からも見直されており、育児には最適です。
 畳を長持ちさせるには、晴天日に部屋の風通しをよくし、水分を令分に吸収させないように手早く掃除するのがコツで、特に新しい畳は必ず乾拭きしてください。

 畳は生きています。
部屋の湿気をコントロールし快適な住まいを作ってくれます。
畳の上にじゅうたん等を敷くと畳の良さを隠してしまうだけでなく敷物との間にほこりやごみが溜りダニの発生につながります。
 畳は年に一度の日干しが理想的です。
2〜3年して畳表を裏返し、4〜5年を目安に畳表を取り替えると、簡単にリフレッシュできる便利な敷物です。
 畳は生きています。
夏涼しく冬暖かく、そして省エネであり、天然の空調機といえます。畳に紙障子、土壁で暮らせばシックハウスなども心配いりません。 
今日では、畳床は床芯に発砲スチロールを用い上下に藁といったサンドイッチ状のものやインシュレーションボード製のものがあります。
また、畳表にはビニールやポリプロピレン、畳縁もポリプロピレン系で織った物ができています。このような化学畳は、古来からの畳と比べ安価ですが、風通しが悪く弾力性、保温性等はなく燃え安いといえます。藺草と藁からなる畳は、今日のように気密性の高いコンクリート造りの部屋は苦手で木造住宅を好みます。掃除機でゴシゴシこすらずに帯で、そうろと掃いて大事にしてください。

東寺 小子房殿 上段の間の厚畳と茵

 今、全国の畳数は約3億枚、畳関係者は約8万人と言われていますが将来的にみると生活環境の変化により減少し、先細りする可能性があります。
  さて、国宝・重要文化財建造物に不可欠な畳は、国産品でなければならないと思います。
お聞きするところ、全文連さんも畳の調査を実施され、畳の材料・技術保存に取り組んでおられ、心強い限
りです。
 私ごとですが、当家は1818年石川県の小松から京都の梅小路に蘭草の苗を持ってきて栽培したのが始まりで私で五代目になります。府県から指名を受け、また社寺の御用達として文化財建造物の畳を納入させて頂いております。
 今後も古代畳の継承、材料の確保、後継者の育成にカを入れていきたいと思っておりますので、よろしく御願いします。

全文連会報原稿より