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風のたわごと  第一回
安川如風

 
合掌 感謝
このたび「風のたわごと」と言う私の随筆らしきものを縁(えにし)のある方々にお送りさせていただきたいと思います。
私の方から一方的にお送りさせていただきますのでお読み捨てください。
さっと吹いて消えてしまう一陣の風のように人生は諸行無常であります。風のたわごととお聞き(お読み)流しください。

人の世は人あっての世であり、良い人との出会いを求めての旅のようだと思います。
さて今回はひとつの出会いのお話をさせて頂きたいと思います。

私の五十四年間にわたる人生の中で多くの人との出会いがありましたが、今回は少し面白い出来事でした。
私の工房の前に掲示板があって、今年の七月初旬の薄暗くなる夕方のことでした。
私が水まきをしている時に母親とその子供らしき人が掲示板を熱心に見ていました。
薄暗くて見にくいのにエライ熱心だなアと水をまきながらその母子を見ていたら、母親らしき人が話しかけてきました。
掲示板にはその時、美術研究生募集要項と京都文化博物館で催されている日光の至宝
展のポスターが掲示されていて、何か古いものを扱っている所のように見えたのか、母親らしき人が「実はこの子は何か古いものが好きで、特に『能』や『お茶』『お花』が好きのようですので、どこか古い文化の仕事をしているところを知りませんか?」と尋ねてきました。「古い文化の仕事をしているところは私のところです。」と答えて少しその子供に興味をもちました。
「そのお子さんはお幾つですか?」と私が聞き返すと、「今、この子は小学校4年生です。年は十歳になります。」私は今どき『能』や『お茶』『お花』が好きな十歳の子はめずらしい!現代にしてはチョイト変わっている子だなア、と率直に思いました。
茶道の千利休のお弟子さんで悲劇の武将であった山上宗二という方が「一期一会」という言葉を言われたそうです。大宇宙の悠久無限の時間の流れの中で、この京都の北の片隅で、今この時に出会うということは本当に不思議なことだと感じます。世の中に不思議はいろいろある中で、一番不思議はこの自分自身が今ここに存在して生きていることです。
不思議と不思議が出会うことが「一期一会」です。袖擦り合うのも多生の縁。
今が最初で最後です。出会いと別れが「一期一会」だと思います。
そこで母親にしばらくの間、「私のところへお子さんを来さしてみませんか?もし興味がおありようでしたら私に貸してください。」と言いました。母親は「能やお茶は月謝が高くて大変です。どうして古い文化はこんなに高く付くのですか、疑問です。」と話しました。
私は「月謝はいりません、無料です。
このことは私の趣味でおこないます。」と言って、夏休みの間、火曜日と金曜日の朝七時から中村天風先生の人生哲学の講義をいたしました。
「大宇宙(梵)と小宇宙(我)の梵我一如の世界、自然と人間と気など、人はなんのために生きているのか、いかに生きるべきか。」という講義をいたしました。そのほか日常生活の心得、家庭生活、対人関係の基本など、未熟な私でも少しは教えられます。

礼儀作法や言葉使い、履物は揃えて出船の形に置く、畳の縁は踏まない、敷居も踏まない。座布団には前と後ろがあって、裏表があるので気をつけなさい。
「有難う」という言葉は自分がこの世にいることが不思議であって、有ることが難しいのに生きている。生かされていることに感謝して「有難う」と言う。
また「ご飯を食べる時に、いただきます。と言いますが、これは他の生命(いのち)をいただいて自分は生かされているのだから、感謝してあなたの生命をいただきます。と手を合わせて合掌するのです。」と感謝の意味を教えると素直にききます。少し古いようですが「仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌、」の意味を勉強しました。
また講義に厭きてくると、私の仕事の手伝いをさせたり、学校の夏休みの宿題に、お寺で使う天井画に牡丹の絵を描かせてみたり、私の時間のあるときには一緒に一日中過ごしました。一回も遅れず休まず頑張ってやって来ました。
母親から聞いたのですが、「師匠の話はメチャ面白いで。お母さんには解らんやろうな。」と生意気にも言っていたそうです。
そう、その子からは「師匠」と呼ばれています。
師匠らしくしなあかんなあと身を引き締めています。また来年から研究生見習として、入所して来る女子大生が大学の「能」研究をしていて、調度その子にとって良い話し相手になると思います。
いろいろな人との出会いから何かが生まれるとおもいます。
鉄は磨かなくては錆びてしまいます。
出逢ったときに役にたつように、いつも自分を磨いて輝かせておなくては生まれて来た甲斐がないと思います。
この文は私がはじめてパソコンで打った文でありまして、本当に生まれてはじめての経験です。今までは部下に打ってもらっていましたが、なんでも自分がしなくてはいかんなアと気ずきやりだしました。さていつまで続くか解りませんが頑張って続けたいと考えています。

感謝  合掌
平安宮絵師  安川如風 拝